ある中学生からの質問と10兆円大学ファンド

先日、浜松市内の某中学校で講演を行った際、生徒の一人から「大学の若手研究者の待遇や育成について改善が必要」との鋭い指摘を受け、感心しました。

若手研究者の待遇と研究基盤のぜい弱化、また日本の大学の存在感の低下や研究者の海外流出の懸念を危機的状況と捉えています。

わが国が「科学技術立国」を標榜することはもとより、科学・イノベーションに関わる重要技術が国家存続の基盤であることは、コロナ禍のワクチン開発の状況からも明らかになりました。

米中の技術覇権争いが激しさを増す中、各国は科学技術関係投資を大幅に増額しています。先日発表された影響力の大きい科学論文数において、中国が初の1位、日本は10位に転落しました。

今こそ、日本においても真の科学技術立国としての研究力強化に向けた取組みを大胆に進め、また「経済安全保障」も踏まえた研究開発等を抜本的に強化すべきです。

そのような状況を鑑み、政府・与党として「大学ファンド」の設立を決定し、来年度予算では10兆円規模への拡充を目指しています。

海外大学との資金力の差を克服し、わが国の研究開発のゲームチェンジとなり得る画期的な支援に、長年科学技術政策に携わってきた者として隔世の感があります。

予算措置やそれに伴う法改正を早急に進めてまいります。わが国の大学の研究力強化のためには、このような基金も活用して、「若手研究者の研究環境改善」「博士課程での給与支給」「産業界でのキャリア構築」などを積極的に推進していきたいと思います。

先日の中学生が科学者を目指しているかはわかりませんが、子どもたちが自身の夢に向かって目標を持てるための環境整備をしっかり進めていきたいと思います。